加計学園・今治図書館 所在不明の2017年度購入図書3000冊

岡山理科大学図書館業務報告によると、2017年度の創設事業費からは和書7016冊および洋書1508冊の計8524冊が購入されている。

本年9月16日現在、今治図書館に所蔵されているのは、和書6403件および洋書1453件の計7856件である。ざっと確認したところ、1割程度は1件で複数冊あるようだ。よって、仮にこれらのほとんどが2017年度購入分であれば、冊数にして計8524という数字は妥当にみえる。

しかし、実際に今治図書館を訪問した或る人は、図書館員から多くは岡山から持ってきたと説明されたという。実際、検索結果の一覧を「出版年逆順」で表示させると、新規に購入したとは思えないほど古い本がかなりの数ある。とても8524冊の新規購入図書があるようにはみえない。

前回記事では「2017年度の購入分を特定することはできない」としたが、改めてその件数と冊数を絞り込めないか検討したところ、根拠のある数字が割り出せたので以下に報告する。

加計学園は、2017年3月27日に丸善雄松堂と図書購入の契約を交わしている(今治市大学立地事業出来高確認調書)。そこで、この契約日以降の日付となるように詳細検索の「新着:    日以内」に任意の日数を入力して新着件数を調べた。

新着件数調査表(Excel) ※ファイルは後述する追加冊数調査のデータも含む。

調査の結果、本年4月11日に和書3652件および洋書1295件がデータベースに一括登録されていることがわかった。主な日付または期間における登録件数は以下のとおりである。

調査表および上図のとおり、図書購入契約日(’17/3/27)から一括登録以前の約1年間の期間でみると、新規登録図書は、和書が82件、洋書が7件と非常に少ない。この89件は、おそらく当該期間中他の図書館等の蔵書として一旦登録されたものが、後日今治図書館に所在変更されたものと思われる。既存の図書が所在変更されただけなら「新着」扱いにはならないだろう。

また、一括登録翌日の本年4月12日以降現在までに登録されたのは、和書が467件、洋書が127件である(※件数は調査日から現在まで変化していない)。上図には示していないが、この間の新規登録は不定期に何度か実施されており、新たに登録された図書の中には2018年度に入ってから発売されたものもある。また、古い本も多いため、この期間に新規登録された分は2018年度の購入分や古い研究室等からの寄贈本だと思われる。

この見立てが正しければ、今治図書館の蔵書中、データベース上で確認できる2017年度の新規購入分は、最大で和書が3652件、洋書が1295件ということになる。なお、この中にも現在取り扱いのない古い本が若干含まれており、一括登録分の全てが一括購入分というわけではないようなので「最大で」とした。

次に、これが何冊に相当するのかを調査した。

調査方法は以下のとおりである。

契約日である2017年3月27日から現在までの新着分について、検索結果詳細画面を「次へ」ボタンで送りながら1件ごとに冊数を確認した。複数冊ある場合は追加冊数(例えば、1件で3部または3巻ある場合の追加冊数は2)を調査表に入力した。同じ調査を、本年4月11日から現在までの新着分および本年4月12日以降現在までの新着分についても実施した。その際、4月11日から現在までの新着分に表示されなかったもの(すなわち契約日以降一括登録日以前に登録された分)については、表の背景色を薄いオレンジにした。また、4月12日から現在までの新着分に表示されたもの(すなわち一括登録翌日以降現在までに登録された分)については、表の背景色を薄いグリーンにした。これにより、背景の「塗りつぶしなし」の図書は、4月11日に一括登録された図書のうち複数冊あるもの、ということになる。

なお、一括登録された冊数を特定するためには契約日から一括登録以前の分の調査は不要だが、数もほとんど変わらないためダブルチェックを兼ねて調査対象とした。また、せっかくなので今治には1冊しかない図書(今治の追加冊数が0の場合)でも岡山キャンパスの図書館・図書室や研究室等他の場所に1冊以上所蔵されいる場合は、そこに所蔵されている冊数を別途設けた欄に記録した(※ついでに数えただけだったが、契約日から一括登録前日までに登録された分には共通点が見つかったので、それについては後述する)。洋書については、複数巻セットでありながらデータベースで1巻分の情報しか確認できない場合、残る巻数を「未登録」の欄に記録した。調査表は、同じExcelファイルのデータシート2枚目および3枚目にある。

調査結果は以下のとおりである。なお、研究室に所蔵されている図書については、「研究室貸出」という状況であるため、その研究室の所在地は不明だが暫定的に今治図書館の冊数として数に含めた。また洋書については、「未登録」の数も含めた冊数を併せて示している。

18年4月11日一括登録冊数

和書(3652件):4057(3652+396+9)冊(9は研究室貸出分)

洋書(1295件):1395(1295+100)冊(未登録冊数85を含めると 1480冊)

和書の4057冊は報告された7016冊に遠く及ばない。一括登録以降既に2018年度発刊の図書が新たに登録されていること、また本来4月4日の開館時に準備が完了していなければならないこと等を考えると、2017年度購入の3000冊がいまだに登録準備中ということはないだろう。仮にそんな状態ならば設置認可の観点からも問題である。

洋書についても和書ほどではないが、データベースで所蔵が確認できる数は報告された数と合わない。

2017年度に本当に報告通り8524冊の図書が購入されたのであれば、残る3000冊余りは現在どこにあるのだろうか。岡山から持ち込まれた分とトレードでもされたのだろうか。これもやはり情報の開示と説明が必要だ。

ところで、契約日以降現在までに今治図書館の蔵書として登録された図書は、和書が4201件、洋書が1429件だが、今回の調査によると、このうち追加冊数のある図書(追加冊数の所在が今治以外の場合も含む)は、和書が457件、洋書が147件と全体の1割少々である。一方、契約日以降一括登録以前に登録された図書の数は、和書が82件、洋書が7件だが、例外なく全件、追加冊数が今治以外の場所(ほとんどは岡山キャンパスの図書館)に所蔵されている(※ヘッダーの色フィルタで薄オレンジを選択すると一目瞭然となる)。

さて、これは何を意味するのか。

例えば、A2号館図書館に1件の図書が2冊あったとして、そのうちの1冊を今治にもってきた場合で考えると、図書の件数としては、A2号館図書館で当該図書を検索しても1件のまま変わらず、今治図書館で検索しても1件として表示される。つまり、元あった場所での件数を減らすことなく、引っ越し先の件数を増やすことができる。

今治に所在変更された図書の元あった場所が現在追加冊数のある場所と同じとは限らない。ここで言えるのは、単に同じ場所から持ってくれば、上記のような数の操作が可能ということだ。逆に、今後今治図書館に複数冊ある1件の図書の1冊が他の図書館に所在変更されたとしても、今治図書館の1件は1件のまま変わらない、ということでもある。

わずかな件数の図書についてそんな操作がなされていたとして、それが同じ岡山理科大学の図書購入費から購入されたものであれば、特に問題はないかもしれない。ただ、特定の期間に登録された図書に上記の共通点があることはやはり奇妙なことではあるので敢えて指摘した。

問題は、やはり3000冊以上の新規購入図書の所在が不明なことだ。仮にこれらが岡山の図書とトレードされていたのであれば、創設事業費で購入した以上、こちらは問題となる。

最後に、4月11日に一括登録された図書のうち自然科学分野の図書がどの程度あるのか調べた。併せてその他の期間に登録された図書についても同様に調査し、各期間における全分野の図書に対する自然科学分野の図書の割合を算出した。具体的には、詳細検索の「新着:    日以内」に特定の日付となる日数を入力し、かつ自然科学分野の図書は分類番号が400番台であるため「請求記号」に「4」を入力して検索した。結果は以下のとおりである。なお、調査表は同じExcelファイルの4枚目のデータシートにある。

全分野の図書に対する自然科学分野の図書の割合

和書

全期間:57%(6403件中3671件)

一括登録分:38%(3652件中1400件)

一括登録以降現在まで:37%(467件中173件)

洋書

全期間:53%(1453件中772件)

一括登録分:54%(1295件中695件)

一括登録以降現在まで:39%(127件中50件)

なお、自然科学分野には、情報科学、数学、物理学、化学、天文学、地学、生物学・人類学、植物学、動物学、医学・薬学が含まれる。

とても専門書を優先的に増やしているようにはみえない、とだけコメントしておく。

コメント

  1. […] 加計学園・今治図書館 所在不明の2017年度購入図書3000冊 凪ぎ___和ぐ 2018/9/16https://sudolao.com/kake-vet-med-library-newly-purchased-3000-books-not-found-in-database/ […]

    • sudolao より:

      詐欺と断定するには情報が足りないと思いますが、公開されている情報からは図書整備計画が予定どおり実施されていないようにみえます。