「違法性がない」というロジックのトリック

加計問題について「法律家として見ると違法性は見当たらない」と言うタレント弁護士がいる。「法律家として」という前置きをわざわざつけ、それがあたかも中立で公平な立場からの意見であるかのように述べる。

「違法性がない」=「問題はない」=「問題ではない」=「時間の無駄」というのは筋が通っているように聞こえる。しかし、このロジックには本題から目を逸らせるトリックが潜んでいる。

今回の問題でいえば、国家戦略特別区域法(以下、法とする)に反する行為があれば違法ということになるわけだが、そもそもその法を作ったのは誰なのか、という話である。

国家戦略特区制度は安倍政権下で発足した。自分がつくる制度の下、自分が選んだ人達に議論させ、自分の友人に有利な決定を引き出す。そんな意向をもっている者が、後々自分で自分の首を絞めるような規定をわざわざ法に盛り込むわけがない。確かに、その法は国会の審議を通過している。しかし、「議会についてはですね、私は立法府、立法府の長であります」と言い放った人だ。何をかいわんや、である。

また、その法は、区域計画をどのように認定するかについては細々規定しているが、今回のケースのように特定事業を一区域限定で行うことになった際にその一区域をどのように選定するかについては何ら規定していないのだ。法案を審議する際、その中で想定されていないことについて公正性が担保されているかどうかなど確認しようがない。

公務員のコネ採用は金銭の授受がなくとも違法だ。それは、国家公務員法第33条および地方公務員法第15条が、職員の任用は、法律の定めるところにより、その者の受験成績、人事評価その他の能力の実証に基づいて行わなければならないと規定しているからである。

今治市の提案が4条件を充足したことを証明する文書はない。能力の実証がないまま「ご意向」や「忖度」で総理の友人に有利な決定があっても違法性が問えないのは、法によって公正な審査の実施が担保されていないから、というだけの話である。閣議決定は法令ではないから従わなくても違法ではない、と逃げられるようになっているのだ。

あのタレント弁護士の横に「法律家として見ると、公務員のコネ採用が違法になるのに、特区のコネ選定が違法にならないというのは、法に不備がある、抜け道があると言わざるを得ませんね」と言う法律家もいなければ、それこそ偏向報道である。

国家戦略特区制度はアベノミクス第3の矢の要という位置づけになっている。アベノミクス第3の矢とは「民間投資を喚起する成長戦略」である。しかし、今治市における獣医学部設置は「民間への公的資金投入による地方財政の圧迫」である。矢の方向が全く逆ではないか。

加計問題は、違法性がないから問題ではないという話ではなく、違法性が問えないこと自体が問題だという話なのだ。