(株)特区ビジネスコンサルティング 「提案から11日で諮問会議」異例の実績とそのカラクリ

(株)特区ビジネスコンサルティング(以下、特区BC)は、2015年1月16日に会社を設立し、その日のうちに国家戦略特区に初提案を提出、さらにヒアリングまで済ませている。

特区提案の手続きとして、アポなしで直接提案を持ち込んで即ヒアリングという流れは考えられない。一方、もしこのヒアリングが「予定どおり」行われたのであれば、まだ存在していない会社の、まだ受理されてもいない提案のためにヒアリングが事前に設定されていたことになる。どんな手続きがあったのか、全く合理的な説明がつかない。

そもそもこれは何の「枠」への応募だったのか。当時あった一般募集の「枠」は「近未来技術実証特区」と「地方創生特区」だけである。前者は募集テーマが異なり該当しない。後者ならば地方創生特区の指定を目指す自治体とセットでなければならないが、当時特区候補だった自治体の提案に美容師関連のものはなく、この「枠」だった形跡もない。

残る「枠」は一般募集とは別枠の「既存特区の追加提案」(区域受付提案)だが、この「枠」に入るためには区域会議での事前審議を要する。特区BC設立前に当該提案の基礎となるような提案が区域会議で検討されていればこの「枠」だった可能性は残るが、’15年1月16日より前に開催された区域会議で美容師関連の提案が検討された記録はない。提案当日に区域会議は行われていないため、同日中に区域会議での検討を含む全ての手続きを行ったとする無理筋さえも物理的に成立しない。よって、この「枠」も違う。

2015年中は随時募集の案内がなく、省庁からの回答にも「随時受付提案:平成27年度分」はないため、少なくとも公式には「随時募集」の「枠」もなかった。

これらの事実から判断すれば、特区BCの初提案は枠外応募だったことになる。

一方、非常に不可解だが、この提案のヒアリング情報は、「平成26年度 提案に関するヒアリング」ページではなく、「平成26年度 関係省庁等からのヒアリング」ページにある。このページには主に府省庁からのヒアリングが掲載されるが、平成26年度分については既存特区の追加提案に関するヒアリング(区域・事務局・関係省庁の三者協議等)も掲載されている。

このページに特区BCのヒアリングが掲載されているという事実一点のみから判断すると、特区BCの初提案は物理的にはあり得ないはずの「既存特区の追加提案」だったことになる。

この提案が受理されたこと自体、果たして正当だったのか。非常に疑わしい状況だ。

提案内容の「地域限定美容師の創設(外国人美容師の解禁)」については、下の画像にあるとおり提案から一週間後の1月23日に関係省の初回ヒアリングが行われている。同じページに特区BCの提案に関するヒアリング情報があることにも注目してほしい。

「地域限定美容師の創設・外国人美容師の解禁」は、このたった一度の二省ヒアリングを経て四日後、第11回諮問会議で早速「各省が困難として、議論が続いている」規制改革事項(なぜか「医療・福祉分野」)として取り上げられている(資料2)。提案からわずか11日で諮問会議にまで到達するという異例のスピード出世だが、上の画像にあるとおり、提案資料および特区BCのヒアリング議事要旨は「非公表」、二省ヒアリングの議事要旨も未だ公開されておらず、背景にどんな議論があったのかは全くわからない。

議事要旨の公開は、2度目の関係省ヒアリング(同年2月9日開催)からとなっている。その議事要旨法務省配布資料には、事業を実施する地方公共団体が「福岡市」であるかのような記載がある。この記載からは福岡市の追加提案と位置づけられていたようにみえる。しかし改めて福岡市区域会議の該当する議事要旨等を確認しても外国人美容師関連の提案は見当たらない。少なくとも福岡市の正式な追加提案でなかったことは確かだ。

特区BCは「福岡創業特区を活用して設立」され、設立当初は本社を福岡市に置いていた(20151019版会社概要)。その縁で福岡市での実施を想定して提案したとも考えられる。それはよいとしても、区域会議を経由せずに福岡市の追加提案としたのであれば、手続き上明らかに瑕疵がある。

同じ「平成26年度 関係省庁等…」ページには福岡市のヒアリングが3件掲載されているが、「福岡市」の名が明記され、いずれの議事も第1回区域会議(’14年6月開催)もしくは第2回区域会議(’14年9月開催)で検討された規制改革提案である。この3件が福岡市の正式な追加提案だったことに疑義はない。

外国人美容師については、特区BCの提案以降、東京都港区(美容専門学校、個人)、沖縄県(業界団体)、大阪府(区域)、新潟市(区域)からも同様の提案が出ている。これらの提案にも特区BCが自社初提案をベースにした「支援」という形で関与していると思われる。

WGや諮問会議の方では、「クールジャパンに関わる外国人材の受入促進」という枠の中で議論が現在も継続されており、WG委員や民間議員らが強力に後押ししている。

直近の第34回諮問会議(本年3月26日開催)の民間議員提出資料には大阪府の追加提案について「特に美容師に関しては関係省の反対が強いが…早急に実現すべき」とある。また竹中平蔵民間議員は「6月の成長戦略の目玉になる」「総理の御指導で是非実現を」と発言している。

疑惑だらけの特区BC初提案が、提案者を替え、実施場所を移して3年以上も生き残り、今まさに強引に実現されようとしている。

…と、ここまでが5月10日の国会前にまとめつつあった内容である。

さてその国会、八田氏の様子がおかしかった。与党議員の質問に対して用意してきた原稿を読むだけなのに、声が揺れ、早口で滑舌も悪い。野党議員のちょっとしたヤジにも反応して視線が泳ぐ。昨夏国会で「決定のプロセスには一点の曇りもない」と主張したときのような強気が全く感じられない。

ここ最近3回の諮問会議で八田氏は民間議員を代表して更なる規制改革の必要性を訴え、事務局体制の強化を重ねて提言している。直近3月26日の諮問会議では既存特区の取組みが鈍化したことまで事務局側に問題があると難癖をつけ、昨夏以前の職員を呼び戻すよう強く求めている。この理不尽なほど強気の姿勢と国会でのあのおどおどした様子はあまりにも乖離していた。

何か八田氏の弱みになるような事務的「事故」でもあったのではないか。事務局に難癖をつけたのはその腹いせで、国会ではその「事故」のことが頭にあって余裕を失ったのではないか。そんな疑念が湧いた。

勘ぐりすぎの気もしたが、余りにも気になったので調べてみたところ、まさに最近八田氏が狼狽してもおかしくない「事故」が起きていた。しかも特区BCの初提案絡みで。

下の画像はWARP(国会図書館アーカイブ)に保存された「平成26年度 関係省庁等…」ページの一部(保存日は上から本年2月1日、3月1日、4月1日)である。説明するまでもないが、15.1.23法務省・厚労省ヒアリング議事要旨が「未だ公開されていない」というのは誤りで、一度公開された後、短期間で削除されていたのだ。プロパティ情報と併せると公開されたのは2月下旬だろう。削除されたのは3月中ということになる。是非3月1日時点のページで公開を確認してほしい。もちろんファイルもダウンロードできる。ちなみに3月1日時点のページがWARPに追加されたのは4月末頃だと思われる(4月1日時点のページは5月25日に追加された)。

さてその15.1.23議事要旨には、八田氏の発言として「福岡というのは非常に特殊な事情があって、アジアに近いものだから、台湾とか中国からお客さんがいっぱい来るのですよ」とある。終わりの方では鈴木亘WG委員が「福岡市の提案」と言及している。また、ヒアリング情報では未だ存在すら明かされていない厚労省配布資料について「美容所数につきましては、今回御提案のありました福岡市と全国を並べて書いております」という厚労省職員の説明がある。

特区BCの初提案はやはり「福岡市の追加提案」として出されていた。これは、事務局およびWGが表では「特区BCの提案」となっているものを裏では「福岡市の追加提案」として別枠で扱っていたことを意味する。手続き上は正式な「福岡市の追加提案」として認められないものを、である。また議事要旨からは、諮問会議に上げられるほど議論が深まっていなかったことも明らかだ。特区BCは、WGおよび事務局の協力で「初提案から11日で諮問会議到達」という「異例の実績」を捏造したといえる。

特区BCが「福岡創業特区」を活用して創業したことを考えると、福岡市に無断で事を運んだとは思えない。おそらく福岡市と非公式に協議したのだろう。特区BCは福岡市で創業する。福岡市は特区BCの初提案を区域会議を通さずに「福岡市の追加提案」として認め、かつそれを公表しない。そんな合意が両者の間であったのではないか。福岡市にとっても福岡市で創業してもらうことで「創業特区」の実績になる。両者ウィンウィンだ。

2015年年頭に会社を設立したのも計算づくだろう。1月27日開催の第11回諮問会議では「地方創生特区」の指定についても話し合われている。新たな特区指定を目指す全国の自治体が注目する諮問会議において、設立後間もない特区BCの初提案が検討対象の「追加の規制改革事項」として突如登場する。特区BCにとっては、自治体に自社サービスの売り込みをかける絶好の場で最高の宣伝となったはずだ。

議事録・議事要旨の公開については昨年12月開催の第32回諮問会議(資料3)で運営ルールが明文化された。しかし、WG座長が提案者の利益が損なわれると認めれば一存で非公表とすることができ、いくらでも恣意的に運用できる。

15.1.23議事要旨が公開されることで損なわれる提案者の利益とは、特区BCが偽装した「異例の実績」である。特区BCはコンサル会社であり、提案した事業の実施主体になるわけではない。利益は、自治体や個人に提案の支援サービスを提供することで生まれる。「異例の実績」が偽りのものだったと露呈することは不利益になるが、規制改革に関する議論そのものが公開されたところで何ら不利益にはならないはずだ。

八田氏が15.1.23議事要旨を長らく公開せず、さらに一度公開されたものを削除する判断をしたことは、特区BCの不当な利益を守り、さらにはその実績偽装と自身等の関与を隠蔽する行為に当たる。これは背任行為と言ってもよいだろう。

さらに言うなら、一旦公開された議事要旨を削除することは、未公開文書について公開・非公開を決めることとは別次元の話だ。15.1.23ヒアリング議事要旨は元々「非公表」とは表示されていなかった。削除後も「非公表」に切り替わってはいない。したがって、「非公表扱いの文書が手違いで公開されたため削除した」という言い訳は通らない。正当に公開された文書が断りもなく意図的に削除されたのであり、その削除行為自体の正当性も問われる。

WG委員の原英史氏も八田氏と同じく特区BCによる実績偽装に関与した疑いがある。特区BC顧問の高橋洋一氏と原氏は(株)政策工房において会長と社長という立場にあるが、15.1.23ヒアリング議事要旨では原氏が八田氏とともに15.1.16特区BCヒアリングに出席していたことが確認できる。

八田氏も原氏も加計問題ではWGの先頭に立って「一点の曇りもない」「プロセスは透明」と繰り返してきたが、彼らの言葉が全く当てにならないということが証明された。加計問題で徹底して政権を擁護してきた高橋特区BC顧問も同じだ。自らの疑惑について説明できなければ、加計問題で何を言っても何ら説得力はない。

特区BCの実績偽装疑惑については公文書管理の問題も含めて徹底的に追及してもらいたい。