大きな嘘は気づきにくい。加計問題が、正にそんな感じ。「怪文書」のことではなく、国家戦略特区と構造改革特区をまたいだ大胆な加計優遇策のこと。堂々と、でもわからないように仕組まれている。
それに気づかせてくれた国家戦略特区のパンフレットの文言を紹介する。
下の画像の赤枠内に注目。
画像1
一体的運営? 1つの提案でどっちもいける??
国家戦略特区と構造改革特区は別物じゃなかったのか??
あまりの違和感に、本業が暇だったこともあり、検証を始めた。いろいろ納得できるまで2ヶ月近くかかった。後半は検証しながら記事を書いた。それが下の記事。
でも、長すぎて誰にも読んでもらえそうにない… というか、加計問題をある程度把握していないと読んでも意味不明かも。そこで、一番の核心部分だけ書きなおすことにした。主に、下の記事の4)と6)の内容に基づく。
ということで、
加計問題の核心
重要ポイント
(1)国家戦略特区と構造改革特区は、一体的に運営されている。1つの提案で両方いける(パンフ)。
(2)前川喜平氏がキーパーソンとした和泉洋人補佐官は構造改革特区をよく知っている(本人証言)。
(3)今治の15回目の提案 = 構造改革特区第26次提案(⇒「〔構26〕提案」)
(4)今治の16回目の提案 = 国家戦略特区提案
= 構造改革特区第27次提案(⇒「〔構27〕提案」)
(これまで今治の構造改革特区提案は15回とされてきたが、16回目があった!)
これを成立させたのが、今治の提案に合わせるかのように始まった、国家戦略特区の提案を構造改革特区の提案とみなして取り扱うというやり方。
(5)「4条件」は、今治の〔構26〕提案への対応方針として文科省が起案した。
(6)15年6月30日の閣議決定の後から16年9月16日のWGヒアリングまで、1年3ヶ月近く文科省は検討を放置していたとされてきた。けれども、本当は、この空白期間に、今治の〔構27〕提案(それと〔構26〕提案)に対し、文科省から「4条件」が回答として出されていた。文科省は放置などしていない。
(1)と(4)と(6)は、指摘されていない事実。(5)も、もしかしたら国会での指摘はなかったかも。
さて、(4)の根拠(A)は、今治市の【「構造改革特別区域」について】のページ。
提案一覧表の枠外左側に提案回数を赤字で付記した。
画像2~4
ちゃんと(驚くことに公式にも)16回ある。16回目は〔構27〕提案。加戸氏はじめ、みんな15回、15回と言っていたのに。
(4)の根拠(B)は、その〔構27〕提案募集のページ。
画像5
「お知らせ」の赤色下線部に「国家戦略特区の提案募集と併せて行います」とのカッコ書きがある。
(4)の根拠(C)は、上の画像5の赤色下線部のリンク先・国家戦略特区3回目〔国3〕の集中提案募集ページ。
画像6
〔構27〕と〔国3〕の提案募集が併せて行われたということ。
募集期間には、今治の国家戦略特区提案日が含まれる。
下の方に、小さい字で「構造改革特区提案とみなして取り扱う…云々」の文言がある。でも、〔構27〕募集ページのように「構造改革特区の提案募集と併せて行います」とは明記されていない。〔構27〕募集ページから〔国3〕募集ページへはリンクされているのに、〔国3〕からは〔構27〕へリンクされていない。
さて、ここで重要ポイントのおさらいを。
(1)国家戦略特区と構造改革特区は、一体的に運営されている。1つの提案で両方いける(パンフ)。
(2)前川喜平氏がキーパーソンとした和泉洋人補佐官は構造改革特区をよく知っている(本人証言)。
(3)今治の15回目の提案 =〔構26〕提案
(必要ないとは思うが、一応、根拠(A))
(4)今治の16回目の提案 =〔国3〕提案 =〔構27〕提案(⇒〔国3・構27〕提案)
これを成立させたのが、今治の提案に合わせるかのように始まった、国家戦略特区の提案を構造改革特区の提案とみなして取り扱うというやり方。
(根拠(A)~(C))
(5)「4条件」は、今治の〔構26〕提案への対応方針として文科省が起案した。
(6)15年6月30日の閣議決定の後から16年9月16日のWGヒアリングまで、1年3ヶ月近く、文科省は検討を放置していたとされてきた。けれども、本当は、この空白期間に、今治の〔国3・構27〕提案(それと〔構26〕提案)に対し、文科省から「4条件」が回答として出されていた。文科省は放置などしていない。
(5)については、今治の〔国3・構27〕提案を受けて行われた15年6月8日(閣議決定より前の日付)のWGヒアリングで文科省職員が詳しく説明している。「4条件」(原案)についての説明部分を引用する。下線部が「4条件」に酷似した部分。
文科省・北山課長:…構造改革特区の26次提案の対応方針で文部科学省から回答させていただいておりますが、(中略)文部科学省といたしましては、愛媛県・今治市より、既存の獣医師養成でない構想が明らかになり、そのライフサイエンスなど獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになった場合には、近年の獣医師の需要の動向を考慮しつつ、特定地域の問題としてではなく、全国的見地から検討を行う必要があると考えています。(中略)まず、提案者のほうで既存の獣医師養成なり構想※を具体化していただく必要があって…(※「既存の獣医師養成でない構想」の誤記と思われる(筆者注))
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/hearing_s/150608_gijiyoushi_02.pdf
「4条件」との違いは、若干の言い回しと「既存の大学・学部では対応が困難」「本年度内に」の部分がないことくらいで、あとはほぼそのまま。
太字下線部のとおり、今治の〔構26〕提案の構想は具体性が不十分というのが文科省の見解で、続いて、今治の〔国3・構27〕提案についても、提案直後に誠に気の毒ではあるが、同様の見解が示されている。今治市からの出席者はいないが、同じ場で2件とも否定されるという結果になった。
このWGヒアリングでの説明どおり、文科省は、今治の〔構26〕提案に対する公式回答(15年8月25日付再検討要請回答*1)および〔国3・構27〕提案に対する公式回答(15年9月25日付検討要請回答*2(画像5の黄色下線部のリンク先))として「4条件」を示している。実際は、15戦全敗ではなく、16戦全敗だったということになる。もっとも、16敗目は、文科省がつきつけただけで、内閣府は文科省の回答を無視したわけだが。ちなみに、回答の日付は、構造改革特区の募集ページで確認できるが、リンク先の国家戦略特区の回答ファイル公表ページには日付の記載がなく、回答日がわからないようになっている。
画像7:今治の〔構26〕提案に対する文科省の回答(15.8.25再検討要請回答・個票からの抜粋)
画像8:今治の〔国3・構27〕提案に対する文科省の回答(15.9.25 検討要請回答(個票は提供されていない))
画像9:赤枠内の拡大画像
時系列の整理
ここで、今治の〔国3・構27〕提案に絞って時系列を整理する。
まず、構造改革特区の動きを含まない時系列表。
画像710:東京新聞 17年6月10日朝刊
これまで、15年6月30日の閣議決定後から16年9月16日の文科省・農水省ヒアリング(上の表には含まれず)までが、文科省が検討を放置していた期間とされてきた。
下が、構造改革特区での動き等を追加した時系列表。グレー背景の項目が〔構〕関連。「放置期間」中、今治の〔構26〕・〔国3・構27〕提案に対して、文科省から「4条件」が回答として出されている。★(今治市と内閣府の協議)は、上記の東京新聞提供時系列表から。今治市と内閣府が何を協議したのか、いくつかは多少想像できそうな気が。
結局なにが問題なのか
① 今治の〔国3・構27〕提案を〔構27〕提案として取り扱っていたことを説明していない。その後、下記②の文科省の回答を無視して、〔国3〕提案としての取り扱いに戻したことも説明していない。
② ①と関連して、「4条件」が今治の〔構26〕提案および〔国3・構27〕提案に対する文科省の回答であったことを説明していない。文科省が、自ら出した回答に挙証責任を負うというのはおかしな話。その上、文言の解釈はWGヒアリングで説明されているのに、政府は「4条件」の解釈を歪め、文科省が負けたと主張した。
③ 15/9/25の文科省からの回答以降、今治の〔国3・構27〕提案を死なせないための特別処置がとられていた疑いがある(15/9/25, 16/3/18, 16/12/13の項目参照)。
例えば、
(a)〔構27〕だけ関係省庁回答と政府対応方針決定が別の日付(時系列表の※1)
(b)〔構27〕だけ政府対応方針が出た後に再検討要請が行われた
(c)〔構27〕の再検討要請回答が〔構28〕と〔構29〕の回答と同日にあった
( (a)と(b)は、構造改革特区の提案募集トップページから各次の募集ページを開いて確認した*3)
④ 〔構27〕の検討要請回答(15/9/25)から、政府対応方針決定(16/3/18)まで約半年、再検討要請回答(16/12/13)までは1年3ヶ月近くもかかっている。③の特別処置のため、今治以外の〔構27〕提案の対応が後回しにされた疑いがある。
⑤ 構造改革特区提案とみなしての取り扱いでは、構造改革特区推進本部で対応方針を決定するとあるが、〔構28〕も〔構29〕も、再検討要請回答があったのみで、政府対応方針はいまだに決定されていない(〔構28〕〔構29〕募集ページで確認した)。これも後回しにされている、もしくは、対応方針決定を勝手に省いている疑いがある。
⑥〔構29〕の再検討要請回答は、国家戦略特区の提案募集ページにしかアップされておらず、〔構29〕募集ページにはアップされていない(〔構29〕募集ページと〔国〕提案募集トップページで確認した)。国家戦略特区と構造改革特区を、運営のみならず、制度ごと一体化して全てを国家戦略特区に集約させる方向に動いているようだが、この動きについて、なんら公に説明されていない。
⑦ 文科省は最後まで今治の提案が「4条件」の最初の3つを満たすことが重要としていたにもかかわらず、「関係各省の合意が得られた」として16年11月9日に意思決定をした。合意がなくても意思決定できる国家戦略特区制度なのに、なかった合意をあったとしている。
今治での加計学園による獣医学部新設は、これだけの大がかりな仕掛けがあって成立した。全て公式ページで行われたことなのだから、背後に誰かの意向があったとしか思えないが。
他の問題点・疑問点については、過去記事の方で。