国家戦略特区サイトの大改造 その2:2015~2016年末年始

国家戦略特区サイトは過去に二度大改造されている。前回記事で取り上げた事案を検証する中で獣医学部新設に向けた検討段階でもサイト改造が行われていることがわかった。

元々の国家戦略特区サイトは、2014年度の本格運営開始からしばらくの間、地方創生推進事務室が運営している他の行政サイトと横並びの見た目だった。

それが、2015~2016年の年末年始をはさんで大きく変貌する。ちなみに、「男たちの悪巧み」写真が撮られたのもこの頃だ。

この改造、内容充実を図った「リニューアル」とは言い難い。トップに固定する必要など全くないプレゼン資料のようなものが追加され、同じリンクの重複掲載も多々ある。最も重要な新着情報は最下方に移されている。事務効率を損なう改悪である。

この改悪前の直近の出来事といえば、2015年12月15日の第18回諮問会議である。この会議で特区の3次指定が行われ、今治市を含む4地域が新たに特区に選出された。

では、この3次指定までの経緯はどのようなものだったのか。

第18回諮問会議での3次指定に備え、11月27日の第17回諮問会議では指定の進め方が確認されている。このときの配布資料2には、「本年春から秋に規制改革事項等の提案のあった43の地方自治体(別紙参照)のうち、夏にヒアリング済みで追加提案のないものを除く全自治体について、特区ワーキンググループにおいてヒアリングを実施中。(11月12日から20日にかけて4日間、30件。)」とある。この間、今治市のヒアリングは行われていない。つまり、今治市は、「夏にヒアリング済みで追加提案のない自治体」ということになる。

11月24日、上記資料2の作成段階で内閣府から今治市に提案内容に誤りがないかを確認するメールが送信されている。そこに記載されている提案は、「獣医学部検討」と「食品等の輸出手続きのワンストップ化と民間拡大」のみである。配布資料2の別紙に記載されている今治市の提案も全く同じ内容で変更はない。つまり、この時の確認で今治市からは修正も追加もなかったことになる。配布資料2の別紙に追加提案が入っていないのは「確認漏れ」ではないことがわかる。

3次指定については、この資料2の方針と別紙に記載された提案内容に基づき特区候補の各地域が評価され、結論が出されることになっていた。

ところが、11月27日以降もヒアリングは続く。11月27日の1件と12月3日の2件は事務局が見落としていた自治体だったようだが、12月10日の4件は既にヒアリングが行われた4地域に対する追加のヒアリングである。そして、その4地域が、5日後の諮問会議で特区指定を受けている。これはどういうことなのか。

最初にヒアリングを受けた広島県の議事要旨には、「本日はこれから4地域でございますが、また追加提案をされておりますので、(中略)評価に反映させていただければ」とある。11月27日以降に4地域から追加提案があり、即ヒアリングが行われ、かつ特区指定の評価に加味され、その4地域が特区に選出された。また、広島県と今治市は、共通の提案があるという理由で一つの特区にまとめられたということだが、追加提案前には何ら共通項はなかった。しかも、昨年3月初旬までは12月10日に追加のヒアリングがあったことさえ明かされていなかった。どうみても出来レースである。

そもそも、なぜ、受付が締め切られた後、しかも結論が出される直前になって追加提案などが認められるのか。その上、期限を渡過してもペナルティが付くどころか有利に働くなど通常ではあり得ない。

実は、この当然の指摘をかわすのが、最初のサイト大改造で追加された文言なのだ。正確には、サイト大改造の後に行われたマイナーチェンジで追加されたのだが。

このマイナーチェンジでページ最下方に追加された3つのボタンのうち、一番左にある「提案募集」ボタンをクリックすると出てくるのが下の新たに作成されたページである(画像では一部を拡大表示)。

「提案は随時受付けています。以下は、集中的に募集を行った期間です。」とある。まるで過去の募集期間が単なる「募集強化期間」だったかのような記載だ。しかし、マイナーチェンジ前には締め切りの意味を無にする「随時受付」という文言はどこにも見当たらない。少なくとも正式には「随時受付」などされていなかったのだ。

それどころか、2015年1月15日から2月13日までが受付期間だった「近未来技術実証特区におけるプロジェクト」の留意事項をみると、「募集期間の期限に遅れて到着した提案は、配達事故や通信事故などの理由の如何に問わず、受け付けません」「募集期間の期限までに提案に関する記載の不備が修正されなかった場合は、受け付けることができません」等とある。通常、役所の手続きとはそんなものだろう。

2015年の春募集秋募集では、「募集期間の期限間際の提出は、提案内容の確認作業の遅れにもつながりますので、できる限り早めに提出いただきますようお願いします」とだけあり、ややトーンダウンしているものの、「締め切り後も提案を随時受け付けます」とはどこにも書いていない。

「提案は随時受付…」やその後さらに追加された「集中受付期間」等の文言は、元々提案は随時受け付けていたかのように誤解させ、3次指定決定直前の追加提案を罪のない行為に見せる効果がある。この印象操作のせいで、私自身も今まで追加提案の提出自体には疑問を持っていなかった。

2015~2016年の年末年始に実行されたサイト大改造も、やはり事実を歪め、誤認識させるための印象操作であり、改竄である。

さらに、この3次指定までの経緯を詳しく検証すると不正が疑われる事案は一つや二つではない。例えば、募集期間外に出された追加提案は「随時受付分」のはずだが、「各府省庁からの回答」に、「随時受付提案:平成27年度分」というものは存在しない。既存の規制改革メニューを活用した追加提案を除き、追加提案分の回答は、「集中受付期間:平成27年10月6日~10月30日分」とある秋提案への回答に含まれている。秋提案の偽造、変造、捏造、どの言葉がふさわしいのか判断しかねる。

前回記事で指摘したとおり、3次指定の特区が「地方創生特区 第2弾」であることも忘れてはならない。

以下、3次指定で選出された4地域の提案状況をまとめる。

<北九州市>

  • 北九州市議会の2015年6月定例会(第2回)(6月12日‐05号)議事録に「2月にいわゆる地方創生特区であるアジアBC特区と、近未来技術実証特区としてロボット社会創造特区を提案しました」とある。状況が把握しにくいが、第11回諮問会議(2015年1月27日)の資料2および第12回諮問会議(2015年3月3日)の資料2によると、どうやら「地方創生特区」の枠組みの中で「近未来技術実証特区」の提案募集が行われたようだ。
  • 同議事録には、「国の第3次の提案募集では6月5日に、(中略)北九州市スマートシティ創造特区の提案」ともある。春提案の提出日は、受け付け最終日の6月5日ということになる。
  • 追加提案は二度行われており、「春提案の追加提案」は、7月31日のヒアリング時点で存在している。春募集期間終了後から春提案のヒアリング当日までの間に出されたとみられる。しかし、春提案追加分への回答は秋提案の回答(厚生労働省 P. 22)に含まれている。春提案の追加分を秋提案として省庁に検討要請したということか。
  • その後、12月10日のWGヒアリング議事要旨に「今日は、またさらなる追加提案をさせていただく」とあるように、12月10日が2回目の追加提案日である。この追加提案については、「追加提案資料1」と「追加提案資料2」は公開されているが、募集要項に基づいて作成された公式提案書は公開されていない。

<千葉市>

  • 千葉市HP「国家戦略特区:これまでの経緯」ページによると、秋提案は受け付け期限の10月30日に出している。
  • 上記ウェブページには、2015年12月10日付で「当初提案内容に加える形で追加提案」とある。12月10日のWGヒアリング議事要旨にも「上4つがこれまで提案させていただいた内容」「今回の追加提案は下2つ」とある。ヒアリング当日に追加提案を出したことになる。また、秋提案の一部を修正している。公開は追加提案資料のみ。追加分と修正分を含む公式提案書は公開されていない。秋提案の回答(厚生労働省 P. 4)には12.10修正分に係る規制等の根拠法令等(医薬品医療機器等法9条の2、9条の3、24条)も含まれている。

<広島県>

  • 春提案秋提案、追加提案と3度の提案がある。
  • 広島県議会議事録に2月に近未来技術実証特区に応募した記録はあるが、春提案を出した記録はない。2015年3月3日第12回諮問会議の資料2「地方創生特区の指定について」にも、広島県のドローンに関する提案が記載されている。「近未来技術実証特区」の提案を春提案に内閣府が造り替えたのか。だとすれば、公文書の偽造もしくは変造が疑われる。
  • 秋提案については、広島県議会12月10日定例会議事録には、「先月、国家戦略特区の指定に向け提案を行った」とある。この発言が正しいなら、秋提案とされている提案は11月に出されたことになるが、秋提案の締め切りは10月30日だった。一方、11月12日のWGヒアリング議事要旨には「この10月の御提案」とある。募集期限の観点からは10月と11月では大違いだが、どちらが正しいのか。ちなみに、「先月提案」の発言者は、同年10月については「本年十月」「ことし十月」「十月」等と言及している。
  • 12月10日WGヒアリング議事要旨の冒頭に「先日のヒアリングの際に、(中略)少しパンチが弱いという御指摘」「幾つか追加をお願いしたい」とあるので、追加提案はヒアリング当日に出したのだろう。公開は追加提案資料のみ。公式提案書は公開されていない。12.10追加提案の一部(例「外国医師による外国患者の診療」)に対する回答が秋提案の回答(例「外国医師…」の回答:厚生労働省 P. 8)に含まれている。

<今治市>

なお、今治市の公文書等のPDFファイルは、村上治氏の共有フォルダからダウンロードさせていただきました。貴重な資料のご提供、ありがとうございます。また、Twitterで大変重要なご指摘を頂いたRyu-ron氏ならびにEigen Kino氏にも御礼申し上げます。